失敗する原因って何だと思いますか?
失敗するパターンをいくつ知ってますか?
「勝ちに不思議の価値あり、負けに不思議の負けなし」という言葉通りに、負けるときは必ず「決まった原因」があります。
その「失敗の原因や本質」を知ることができれば、「失敗しない=負けない」となり、勝つ確率をより高くすることができます。
そこで今回は『「超」入門 失敗の本質』から、第二次世界大戦で大敗した日本軍から「失敗の原因や本質」を読み解きます。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉にある通り、歴史から学べることはとても多いです。
こんな方におすすめ
- 失敗の原因とメカニズムを知りたい
- 組織作り、戦略についてに知りたい
- 日本軍の戦争の敗因を知りたい
この記事でわかること
・失敗する原因と本質やそのパターン
・戦略の立て方、指標の作り方
・ダメな組織運営と人事制度を良くする方法
目次
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戦略の基本
戦略:目標達成につながる道をいかに作るか
戦略のミスは戦術でカバーすることができない
実際に日本軍の戦いの70%近くが「目標達成につながらない勝利」に費やされたという筆者は言います。
米軍を抑止する効果のない17の島に上陸し占拠するなど、大局的な戦略を持っていなかったようです。
また、もう一つ大事な概念としては【サンクコスト効果】というのがあります。
サンクコスト効果
今まで使った費用や時間を回収することが一番の目標になってしまい、途中でひくに引けなくなって撤退できずに傷を広げながら突き進むこと
多少の例外はあるにせよ、戦略のミスは現場の優秀な戦術でもカバーすることはできません。
このことは是非とも頭に入れておきたいですね!
指標の重要性
日本は体験的学習察知
指標が勝敗を決めるため、どの指標を選ぶかが戦略
成功要因を理解していないと、再現性がなく長期的には負ける
実際に本書『「超」入門 失敗の本質』では、ホンダのスーパーカブが売れた理由は「偶然、新しい指標を発見した」としています。
初めの目標は違ったけど、途中で新しい戦略が見えてそちらに切り替えたことで成功したというになります。
つまり、戦略が先になくても勝利することができたということです。
これは驚くべく事実であり、日本の強みでもありますが、弱点としては「再現性がない」ということにもなります。
悪く言えば「たまたま新しい指標を発見」できたからに過ぎず、「戦略の定義」が明確ではないためです。
うまくいかなかった例がインテルと競った半導体メモリです。
安価で高性能な日本製品のメモリは世界を席巻していました。そこでインテルは戦略として「追いかける指標」を変えてきます。
一方で日本は世界で認められた「成功体験」と「同じ指標」にすがり同じ「機能」の強化にのみ活路を見出しますが負けます。
この指標の設定は、次で説明する戦争やビジネスで最も重要になります。
次の「ゲームのルールチェンジ」でより詳しく説明します。
ゲームのルールチェンジの重要性
ゲームのルールを変えたものが勝つ
ゲームのルールを変える方法は指標のチェンジ
日本の強さは「超人的な猛訓練・練磨」で養成された技能である本書は語ります。
・ルンガ沖夜戦など、猛訓練を重ねた海軍の強さ
・香港、アジアでの、白刃銃剣主義を徹底した快進撃
・航空機による空中戦、爆撃の驚異的精度
これらは機械や兵器を扱う人間の精度を限りなく高めた強さです。
日本海軍は「月月火水木金金」の猛訓練で有名ですが、剣術などの「型」→「達人」にするようなことは本当に得意です。
ただ、先ほどの「インテル」や「マイクロソフト」との競争で明らかになったように、「指標」を変えて【ゲームのルールを変えた者】が圧倒的な勝利を得ます。
実際にアメリカは「達人を不要とするシステム」を作ることで、日本軍を次々と撃墜していきます。
戦時だけではなくインテル、マイクロソフトなどの昨今のビジネスでも同じです。
品質の高い零戦部隊が「レーダー」をいうビジネスモデルを積んだ艦隊に一気に撃墜されてしまうイメージです。
次はイノベーションという名の「ルールを変えるため」の原理について見ていきます。
イノベーションと組織運営のミス
イノベーションの原理は【指標の発見→無効化→新たな指標作り】
成果を最大化するのに大事なのは現場の対話とフィードバック
圧倒的な技術と強さを持った零戦部隊も、アメリカのレーダーなどの「戦局を変える新技術」、サッチウィーブ戦法などの「戦略」の前に、なすすべもなく、最後は「特攻」という形で散っていきます。
まさにイノベーションの3ステップである【指標の発見→無効化→新たな指標作り】をされて負けます。
では、なぜアメリカはイノベーションを起こし、戦略を変えて勝つことができたのか?
そこには日本と違った人事評価制度や組織作りがあります。
上の図解にも書きましたが原因は以下になります。
上層部が自分たちの理解していない現場を蔑視
上層部が「現場の優秀な人間の意見」を参照しない
日本人と日本の組織は過去に発見されたイノベーションを戦略思想化し「虎の巻」としたい欲求があると本書では説きます。
今まで勝てたのは零戦のおかげだ!レーダー?知らん、我々は零戦で勝つんだ!
みたいな硬直した感じです。
実際に技術者や現場はレーダーの有効性を軍の上部に訴えました。
ただ上層部にはレーダーに対する知識や理解が欠けていたため、全く相手にされずに徹底的に無視されてしまいます。
これでは成果を生み出すどころか、殺すことになります。
一方のアメリカは、戦闘機の製造会社の社長を現場に呼び意見交換を行なったり、現場の声を活かしました。
第二次世界大戦の勝負の境目は、戦略ばかりではなく、こういった現場の声や技術者の声を聞けるかどうかによるところも大きかったのです。
創造的破壊を生み出す3つの要素について図解でまとめます。
創造的破壊=従来の指標とは大きく異なる「劇的な変化」
人・組織:硬直的な人事ではなく、戦果に直結する優秀な人材をダイナミックに登用
新技術:技術開発者の自主性、独立性を高く尊重し戦局を変える新技術の開発促進
運用方法:民間、陸・海軍問わず性能を追求
日本は「精神主義」「過去に勝った技術の過信」など、刻々と変わる戦局に対応することができずに敗戦を迎えます。
続いては、より深く人事制度や組織作りについて学んでいきます!
人事評価制度とチャンスを潰す人の特徴
新戦略を生む人事評価制度では「成果」を基本とする
チャンスを潰す人の特徴は自分の経験・知識にだけ頼り周りを信用しない
戦果につながる人事システム
簡単にまとめると「感情」で動くか「成果を意識」して動くかです。
日本は「頑張ってる姿勢」などを高い評価基準としたり、いつもの階級体制そのままで、1度偉くなればバカでも指揮官になります。
会社にもそういう人いますよね?
一方でアメリカは人事選考プロセスに「感情」が入り込む余地を排除します。
そのためリーダーに選ばれたものが結果に自信をもち、思う存分能力を発揮します。
そして「成果」が出ない場合は容赦無くポジションを奪われます。
図解でまとめると以下になります。
米軍:組織運営の基本は「新戦略を生み出す場」としての組織構成、人事を徹底追求
日本軍:権威が常に「新たな意見と指摘」を押しつぶす
ここらへんは現代でも十分に使える方法ですね。
チャンスを潰す人の特徴
チャンスを潰す人の特徴は上の図に挙げましたが、大事なのはチャンスを潰す人を絶対にリーダーにしてはいけないということです。
実際にそのような人物をリーダーにして起きた悲劇が以下です。
・ガダルカナル作戦では、実際は10倍近い米海兵が大火力で待ち構えていたにもかかわらず、大本営の確認不足により、少数で急行することを現地軍は要求された
・インパール作戦では最前線の兵士に「食糧がなくても弾薬がなくても戦え」という指令が出て、結果的には補給がほとんど届かない最前線で、戦死者より餓死者の方が多かった
・沖縄戦では、現地軍が効果的に進めていた内陸部抗戦を、大本営の航空戦力至上主義により飛行場奪回への戦闘へ転換させて、無駄に兵力を消耗し沖縄陥落を加速させた
能力のない人間をリーダーにした悲劇としか言いようがありません。
勝てたかもしれない戦、生き残る方法があったかもしれないのに、無能なリーダーのせいで死ななくて良い命が奪われたのです。
いかに最前線の情報をきちんと得た上で(希望的観測ではなく)戦略を立てるのが大事なのかがわかります。
そして、その戦略作りの基本は人事システムにもあるのです。
空気の熟成
戦艦「大和」は当時の最新鋭戦艦でした。
しかし、味方航空機の護衛なく沖縄へ出撃し、米戦闘機300機以上の波状攻撃を受けて壮絶な最後を迎えます。
軍事的には無謀であった「大和」の沖縄出撃については、「全体の空気がそうだったから」と言われています。
空気に関しての全体像をまとめると以下になります。
最大の問題は、極めて小さな正当性しかないことを利用して問題の疑問を封殺し結論を押し切ってしまうところ
こういった空気に対抗する手段は、常に冷静に合理的に物事を判断するのと、日本にはこういう「空気」に侵されやすい風潮があるということは肝に銘じる必要があります。
さらに、空気の他にも方向転換を妨げる4つの要素というのがあるので以下に図解してまとめます。
今まで払った犠牲を無駄にしたくない、取り返したいという心理で悲劇を拡大する
未解決の心理的苦しさから結論をすぐに出そうとする
同調圧力
何とかなるさという甘い希望の罠に陥る
空気や方向転換を妨げる要素はいまだにあります。
こういったことが起きやすいということを頭に入れておきましょう!
長くなりましたが、最後はリスク管理に関してです。
リスク管理
リスクを隠すのは悲劇を劇的に増やし、新たな悲劇も生む
リスクを公表することで、注意する人が増えて、突然のリスクにも備えることができる
『「超」入門 失敗の本質』を図解で解説まとめ
今まで『「超」入門 失敗の本質』を図解を含めてまとめてきましたが、実際の本は実例や戦争の状況描写も詳細に描かれていてとても面白い上にもっと中身が濃いです。
今回の記事で興味を持った方は、ぜひ本書を手にとって読むことをおすすめします!
本書は戦争という日本の一大事から失敗の本質を炙り出しています。
「失敗の本質」には、現代、そして未来を生きる上での大事な指針が含まれています。
冒頭にも書きましたが「愚者は体験から学び、賢者は歴史から学ぶ」
是非とも歴史を知り、そこから学ぶことで賢く生きましょう!
今回は以上になります。試してみ!